「引退馬には触ってはいけないの?」のギモンに答えます

引退馬支援について

※本記事の内容はゴットフリートの会のケースの話であり、マーサファーム様ならびに他の牧場様のルール・見解を代表するものではございません。その理解のもと、読み進めて頂けますと幸いです。

引退馬を巡る議論

先週あたりから引退馬を巡るいろいろな騒動がありました。その細部に触れることは避けますが、その中で「引退馬には触ってはいけない」というようなことが話題になりました。

当たり前のことですが、牧場が「触らないでください」とルールを設けている場合には、見学者は問答無用で触ってはいけません。そこにはそれ以外の解釈が入る余地はないと考えてください。

また今後起こりそうなこととして「ルールが書いてないから、触ってもいいと思った」というようなこと言う人が登場するかもしれません。しかし、そんなことはありません。ルールが書いてなければ(見当たらない時は)触ってはいけません。

これは私の考え方ですが、

【引退馬(養老馬)に触るのは原則的に禁止。ただし許可が得られた場合のみ触れられる】

という形が、牧場見学のベースだと考えています。

ただし、ここで難しいのは「引退馬」という主語が大きい点です。

  • 種牡馬や繁殖牝馬(仔馬も含む)など絶対に触れてはいけないタイプ
  • 観光牧場など触れてもタイプ

など、いろいろなタイプがあります。

今回の騒動の中でよく話題にあがった「牧場見学の9箇条 | 競走馬のふるさと案内所 (uma-furusato.com)」の中には「6.危険ですから絶対に馬にさわらないでください」と書かれています。

馬は見ているだけでも楽しいですが、触りたくなる気持ちもわかります。

今回の一連の騒動で「馬には絶対に触ってはいけない」という風潮が強く打ち出されてしまったようにも感じるのですが、下記のような事例もあるという話もしておきたいと思います。

馬のお仕事

引退した馬たちにとって、やはり重要なのは「預託料・飼育料」です。

健康な馬で、かつ適性がある馬であれば、乗馬クラブに行って、その馬の役割を果たすことで、稼ぎを生み出すことができます。

また牧場が観光牧場であれば入場料などが預託料に回り、その対価として馬は人を乗せたり、人間に触れられることで収入を得ています。

ここで少し難しいのは養老牧場の立ち位置かもしれません

ゴットフリートがいるマーサファームは観光牧場ではなく、あくまでも牧場さんの善意で、予約された方限定で見学することができるようになっています。

ただ牧場からするとタダで見学してもらってもメリットはありません。その中で、見させてもらえることに感謝しないといけない。ここが大前提です。

中には「牧場側が柵を二重にしたり安全策を講じていないのが問題では?」というような意見も一部に見られましたが、

お金をかけて安全策を講じてまで見学に来てもらうメリットはない

のです。

あくまでも私たちファンは「見させてもらっている立場」なのです。

もしこの論調が進むようなことがあれば牧場側はお金をかけてまで対策する意味はまったくもってありませんから、【見学禁止】に方針転換するのが当たり前です

引退馬支援の機運が高まっている中で、「引退馬に会える機会」を守っていくには、私たちひとりひとりの意識がとても大切です。

みんな、おとなしいワケじゃない

牧場側も事故は起こってほしくないので、見学の方がいる場合には極力、目を離さないようにしていますし、馬を触りたい方には許可の判断やアドバイスをしたりします。

ですから

  • 牧場を許可なく訪問しない、スタッフがいない時など無断に馬に近寄らない
  • 馬に触りたい時には必ずスタッフに触ってもいいか?を確認する

当たり前の話ですが、これを厳守するだけでも、だいぶ牧場見学のマナーがよくなるはずです(それ以外のルールも守りましょう)。

こうするだけでも牧場もお金をあまりかけずに安全に見学を実施することができます。

ゴットフリートの場合は、見学された方ならご存じですが、悪ガキでやんちゃです。何度も通っている私も、腕をかまれて2週間ぐらい腕が不自由になったこともあります(苦笑)。

そういう面もありますので、馬房にいる際は写真のように高いところにもバーを設置して、“攻撃可能範囲”を小さくしています。

もしかしたら、彼はお客様がこないような牧場で暮らしたほうが安全なのかもしれません。

しかし、彼は足腰の問題で乗馬には適さず、マーサファームで余生を送ることにしました。彼は今年で13歳。長ければあと20年ぐらい生きる可能性もあるでしょう。

その中で里親となって下さる方との【ご縁づくり】がどうしても必要です

ですから、上記のような安全策を講じながら見学可能(要予約)としています。

また、これは私個人の勝手な願いではあるのですが、ゴットくんが乗馬に適さないという事情で私たちのもとに来てくれたことはひとつの運命だと感じています。

  • 乗馬以外の道で引退馬が生きる道を示すこと
  • 人々がゴットフリートを通じて馬について、もって理解すること

こういったことを叶えてくれるのではないかなと密かに期待しています。

引退馬のSNSを見ていると、どの馬もおとなしくて、人懐っこいように映るでしょう。

しかし実物のゴットくんを見た人はそうは思わないはずです(笑)
↑:彼の名誉のために補足すると狂暴な馬ではありません。「寒い時期」と「対男性」当たりが強いだけですw

でも、そういう経験を通して「馬に近づく時には注意しないといけない」ということを人間に教えることがゴットくんに与えられた使命なのかもしれません(一方で彼に人間との付き合い方を躾けることが私たちの役割だと考えています)

だいぶ話が長くなってしまったので、そろそろ話をまとめようと思いますが、最終的には

【引退馬(養老馬)に触るのは原則的に禁止。ただし許可が得られた場合のみ触れられる】

という考えで馬に会いに行くことが大切なのではないでしょうか?

スタッフさんに聞いてみて、許可がおりれば触れる(触れないことが当たり前)
そして運よく許可がもらえたら、スタッフさんの目が届く範囲で安全に触る

これを守って頂くだけでも、引退馬を巡る環境が閉鎖的な方向に進むことを避けることができます。

直近の騒動もあって、皆さまにもいろいろな意見があると思いますが、ここまで騒動が大きくなっているのは、引退馬への関心や興味がかなり大きくなっていることの裏返しでもあると思います。

そして、そうした方々の支援が引退馬たちにとって大きなパワーとなっています。

こうした良い流れを、ルール・マナーを守って維持していくことが、ファンにとっても、牧場にとっても大切なことだと思いましたので、今回、あえて筆をとることにしました。

皆さまが牧場見学について改めて考える機会になったならば幸いです。

「ゴットフリートの会」代表
露木 慧

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